確実に完了させていく

非常にゆっくりとした手つきであるにもかかわらず、しかし確実にリストに書かれている事を上からこなしてゆくこの人は、数十万行からなるプログラムを現在も統括しているプロジェクト・マネージャーです。過去30年にわたり、この研究分野でトップクラスの業績を誇る人物でもあります。

そんな人がコンピュータを打つスピードが非常に遅いというのはとても意外な気がしました。しかしそのかわり、確実にこなしてゆく作業の裏で、「次になにをすべきか」という思考がフル回転している、そんな印象がありました。

黄色いノートパッドはそんな彼を脱線させないための「いま、何をしているか」のリストなのだということが見て取れました。実際、彼はリストに書かれている以外のことは、いっさい実行していません。

見つからずにいったんあきらめたファイルを「あ、あそこだったかも」と思い出した場合でも、そのコマンドを打ち込むのではなく、リストにそれが加わってゆくのです。

そしてリストの一番下までいったところで、「すべてのタスクが完了している」のではなく「完了しなかったものにかんするアジェンダが立ててある」という状態であったのにも注目すべきだと思いました。

このリストのうち、打ち消されていないものが、次のリストに加わってゆく訳です。単純で、アクションだけに根ざしたリスト作りのお手本を見ているようでした。

脱線せずに、順序を守り作業をこなしていく。思いついたことはリストの最後に追加する。こんなすごい人でも、タイプがメッチャ遅いこのギャップがまた面白い。