http://www.nikkeibp.co.jp/news/manu08q2/574880/[リーダー]

「技術力には自信があるんだけど、どうもカネ儲けがヘタでねぇ」

メーカー在籍時代、さらには記者として多くのメーカーで経営者や技術者にお話をうかがうたびに、耳にタコができるほど聞いたフレーズである。文字で書けば自嘲、反省の弁ともとれるが、実際に生でうかがうとそうでもない。ほとんどの場合、笑顔で、ときに誇らしげに語られるのである。

私も多少は常識をわきまえた社会人なので、そのような場面に遭遇すれば微妙な笑顔で「そうですかぁ」などとあいまいに受け流す。だが、責任ある立場の人からこのような発言が飛び出すと、かつて技術者であった私はそのたびにイラっとしたものだ。発言は「技術者は頑張っていい技術を開発してくれるけど、会社はその成果を利益に結びつけることができない」ことを白状したもので、誇らしげにそれを言うということは「それに関して責任はぜんぜん感じていない」ということだろう。少なくとも私には、そう聞こえてしまうのだ。技術者に限ったことではないけれど、努力して成果を出した人がちっとも報われないシステムというのは、何ともやりきれないものである。

技術を活かす経営というのは、難しい?

どんなに給料に格差があっても、「理系に進んだからにはメーカーに行きたい」という人は相当数残るだろう。けれど、たとえば営業職を希望する人が、給料が高い金融とか商社とかを除けて、わざわざ給料の安いメーカーを志望するだろうか。西村氏の考えは「否」だった。この結果として、メーカーの経営部門を含む非技術系部門が、技術系部門を上回る勢いで弱体化していくのではないかと懸念していたのである。もちろん、その影響を他より激しく受けるのは、同じ業界にあっても給与水準が他より低いメーカーである。

営業力(ここではお金儲けがうまい人を指しているよう)がある人間は、進んで給与水準が低いメーカーを選ばないという、嘆きからきたセリフ(「技術力には自信があるんだけど、どうもカネ儲けがヘタでねぇ」)だったのかも?
単純比較はできないし、給料がすべてではないが、同じくらいの負荷なら、給与は多いほうがいいと思うのは、自然なことでしょう。